気ままに道草TRAVEL川治温泉 →とばっちり





とばっちり


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 ちょと読みにくいかな…?
 それでは…

 昔、川治に鬼子蔵と千代という働き者の夫婦がおったそうな。二人の間には小太郎という息子がいてな、いつも野山を飛び回って元気に遊んでいたんだと。
 ある日のこと、小太郎はいつものように遊びに出かけたそうな。しかし、夕飯どきになっても帰ってこない。心配した鬼子蔵夫婦や村人たちは、みんなで手分けして探したんだと。だが結局は見つからず、鬼子蔵夫婦は小太郎の帰りを神に祈ったんだと。
 十日ほどたった夕方、小太郎はおいしそうな食べ物を手に、ひょっこりと帰って来たそうな。小太郎が言うには、鶏頂山で見つけた鶏と遊んでいるうちに、いつしか山奥に迷い込んでしまったんだと。すると、不思議な爺様が現れて、地面から自在に湯を湧き立たせると、その鶏の卵と近くに生えていたにらを茹で、腹が減った小太郎に食べさせてくれたんだと。しかも、その食べ物を土産に持たせ、家のそばまで送ってくれたんだと。
 心労で哀れなほどやつれた鬼子蔵と千代がそれを食べると、みるみる元気になったんだと。村人たちは「その爺様は、享保8年の五十里洪水で川辺に湧きだした温泉・薬師の湯の薬師様に違いない」と口々に噂した。そして、薬師様が教えてくれた元気になるにらと卵の食べ物を、家でも作るようになったんだと。
 だけど、その料理が出ると、親たちは思い出したように「山深くに行くな」「一人で出かけるな」と、子供たちを強くいさめるもんだから、子供たちはいつも小太郎のとばっちりをくってたんだと。そしていつしか、この食べ物が「とばっちり」と呼ばれて、川治一帯に広まったんだと。

……だそうですよ……




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